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孟子 17
是を之れ、務めを知らずと謂う。
先にすべきものを後にし、重い務めを軽く取り扱う。
そういう者を、務めを知らない者だ、というのである。
<管 見>
前文を含めて記せば、孟子は次のように言った、という。
知者とは、本来如何なることでも熟知しているけれども、
早急にせねばならない物事に取り掛ることを、
最優先するのだ。
仁者は、本来如何なるものでも愛さないものはないけれども、
先ずは賢者と親しむのを最優先とするのが務めなのだ。
堯や舜(聖天子と言われる三皇五帝)の知は、
本来対象となるヒト・モノ・コトに偏りが無い。
然し、先に為すべき課題を急ぐのだ。
堯舜の仁は、本来他人を偏って愛することなどない。
然し、賢者と親しむのを急ぐのだ。
最も大切な三年の喪を行いもせずに、
緦小(喪服)や功のような軽い喪の事を具に論議したり、
大飯を食らい、汁物を流し込むように飲んだりするような、
大きな非礼を行いながら、重箱の隅を突っつくような
僅かな言動を、針小棒大に取り上げてさも大きな問題とする。
これこそ、先ず為さねばならない本務を知らない、
ということであって、当に本末転倒というべき品性に
欠けた言動であろう。
次に遠い親族に対して行なう五ヶ月の喪について、
とやかく言ったり、
大食や啜り飲むなどの無礼な態度を、
平然としておきながら、他人には『決歯するな』
などと説教する。
こういう輩を、真に為すべきこと・道理を知らない者だ」、と。
このように聖人君子といえども人間だから、
能力の受容力には限度があるから、
配慮に欠ける場合もあろう。
それを目下或いは周囲の者が推量して配慮して、
綻びを補っていくのが儒教のいわば
「ただの集団でない正しい組織」なのだ。
それは、各界の彼方此方で見られる、
横暴な権力の乱用による弱者への
パワーハラスメントとなって現象化しているのだ。
然し、当人の認識は己が神の如く存在であって、
何の反省もなく当然のように振舞っている。
組織とは、上司は仁者として人間として対等である、
とうことを十分認識したうえで部下に対応し、
下の者はそれに呼応して尊敬の念を持ちながらも、
媚びることなく
「One for All, All for One」(一人はみんなのために、
みんなは一つの目的のために)をモットーに、
共通の目的を達成すべき互いに努力し合うものだろう。
さらに補足すれば、決して公式ではなくとも、
各自夫々の立場に応じた役割を果たすために、
それに応じた義務・責任を伴い合って、
互いに思いやるのある規律ある集合体ではなかろうか。
〈用語注〉:
「緦」〜緦麻のこと、細い麻糸で織った喪服で、
五段階の喪服の中では最も軽く、喪の期間は三月。
「小功」〜細やかに織った麻の喪服、下から二番目、
喪の期間は五ヶ月。
「放飯流歠」〜「放飯」は、放に大食すること。
「歠」は、啜り飲む意、「流歠」で、
汁物を流し込むように飲むことー暴飲暴食。
従って、礼の無い、無礼な態度。
「決歯」〜決齒は、乾し肉を噛み切る、不敬の小なる者を指す。
本来は、食べる大きさに手で小さく裂くのが正しい礼だ、
という。
「仁者」〜情け深い人。儒教の説く仁徳を備えた人。
「仁徳」〜他人に対する思いやりの心。
「賢者」〜聖人に次ぐすぐれた人。賢明で堅実な人。
道理に通じたかしこい人。
「仁」〜愛情を他に及ぼすこと。いつくしみ。
なさけ。思いやり。
「功」〜働きによって成功をおさめたその手柄。
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2022年04月18日
孟子 16
進むこと鋭き者は、其の退くこと速やかなり。
出足が速すぎる者は、その後退もまた速い。
一時に力を出し過ぎると、その勢力もまた速く衰える、というのだ。
<管 見>
※今回の至言は、前回とも重複することが多いことを承知の上で記す。
自ら選んだ仕事について、次記のような三通りで、考えてみると、
*途中で投げ出してしまう者は、どんな仕事に携わっても完遂させることは、できない。
*手間をかけるべきこと・ところを、効率だけを優先して簡単に省略してしまう者は、何事にも端折ってしま
うことの方向だけの頭しか働かない。
*結果を急いで邁進し、過程を大事にしない者は、何故?の考えすら浮かばず、諦めるのが速い。
諄いけれど、敢えて言葉を変えて記すと、
*「挫折への戒め」(辛抱・忍耐の大切さを解せぬ者は、仮に名利を得たとしてもそれは偶発的なもであって、
あくまで形而下であって、形而上(理念的なもの)では人生の落伍者だといえる)
*「手抜きへの戒め」 (過程の大切しないのは進歩が望めず、人間的には成長しない)
*「頭を働かせず単なる惰性ですることへの戒め」(手間とは、ただ手足を動かすことでは無くて、
頭脳を十分に駆使することで、価値を生み出し・自分を高めることにもなるのだ)
「慌てる乞食は貰いが少ない」
◦他者よりも多く貰おうと急いで貰いに行く乞食は、施す人からその欲深さを嫌われて、結局は貰い分が減っ
てしまう。
◦自分の都合のみを押し付ける我が侭な要求をする人間は、相手の反感を買い、結局は損をする。
「急がずば ぬれざらましを 旅人の あとより晴るる野路の村雨」(太田道灌)
◦もしも急がなければ、濡れなかったであろうに。
旅人が通った後から晴れていく野の道に降った驟雨(村雨・にわか雨)の光景である。
◦皮肉にも晴れていく村雨の景は、あらゆる物事の道理あり、急いては事を仕損じることの一種の警句であろ
う。
「急ぐなよまた留まるなわが心定まる風の吹かぬ限りは」(島津忠良)
◦生き急がず、死に急がず、未練がましくなくその時を静かに迎えよう。
◦何事も自然体で、の人生訓か?