2022年08月08日
書経 3
(皐陶曰、…)
天工人其代之。
天工其れ之に代わる。
天子のなすべき仕事、それを人間が代わって行ってい
るのだ。
だから、人は夫々自分の仕事を天職と考えるべきであ
る、という。
<管 見>
「職業に貴賤は無し」(石田梅岩・都鄙問答)という言葉
がある。
また、ロングフェロー(米の詩人)に「建築師」という詩
がある。
それは、
― 世の中に、無用なおのや、卑しいものは一つもない。
すべてのものは、適所におかれたならば、最上なもの
となり、
ほとんど無用に見えるものでも、他のものに力を与え
るとともに、
その支えとなる。
朝焼けや夕焼けの見事な景や、ソフトな感触を我々に与え
てくれる木漏れ日など、自然による和みの風景、即ち、その恵
みは塵(飛び散るほどの小さな塵芥の類)の仕業だ、という。
― 世の中に、無用なものや、卑しいものは一つもない。
塵や埃にも、役割がある。
しかも、こんな素晴らしい役割が。
美しい自然をあるがままに映し出すのは、塵や埃があ
ってのこと。
しかし、塵や埃は、ただ淡々と空中を舞っているだけ。
わたしはわたし、あなたはあなた。
わたしはわたしの本分を尽くすのみ。
一体、だれがわたしのように空中を舞ってくれます
? −
塵や埃の、そんな声が聞こえてきそうだ。
それを聴くことができ、そして素直に受け入れる人間に
なりたい。
たとえ、木偶の坊といわれようとも。(短見)
今回は、これ以上の繰り言は言うまい。
〈用語注〉:
皐陶:古代中国の伝説上の人物。
司法をつかさどる官吏(司空・司寇)として力をふるった
といい、どのような事件に対しも公平な裁決につとめたとさ
れる。
その判決には、正しい者を判別して示すという霊獣である獬豸を使
ったともいい、後の時代に司法官のかぶる帽子を獬豸冠と称する
ことの由来にもなっている。