2022年12月05日
春秋左氏伝 9
髪短かけれども心甚だ長し。
年老いて髪は短くなっても、その智計は甚だ深い。
<管 見>
(八十路となったとは言えども、馬齢を重ねただけ
の愚老の場合のように、髪は短いどころかつるっ禿
になっているのにも拘わらず、元々智計の基と
なる智恵・知力・才智などに欠けるうえに、最近頓
に頭の働きが衰え鈍くなっている者もいるが…)
扨て、人が成長するにつれて習得する知識には、
(独断だが)
@ 暗黙知:その人しか通用しない知識や技術。
(頭脳より身体に滲み込んだ、所謂、熟練)
言葉や映像など伝達手段では、他の人たちに
伝達することが困難なもの。
A 形式知:他の人たち(第三者であっても)習得
が比較的容易な知識や技術。
言葉や映像など伝達手段によって、他の人たち
に伝達することが容易なもの。
の二つに分けられる。
これを理解するのに良い例は?
例えば、
*家庭料理(便利な機器を使わないでの手作り料理)
〜前記の@
仮にレシピがあっても、本物の味は一朝一夕では
決して習得することは無理。
*冷凍食品など(スーパーなどでの)やパックされて
いるもの〜前記のA
電子レンジなどを使えば、愚老のような者でも食
することができる。
但し、舌でしみじみ味わう手作り(材料の組み合わせ
+作り手の手加減による=見えない人情が加わった
作り手による微妙な味わい)…、云々は言えない。
ところで、突然だけれど、過ぎ日のある新聞の記事が
浮かんできた。
それというのは、今年(2,022年)の春に亡くなった
元前橋地検検事正で、現役時代は
*リクルート事件
*共和事件
*ゼネコン汚職
…、政界が絡む大型事件で大物政治家を取り調べ、
自供に導き逮捕したことで知られる熊崎勝彦さ
んのことである。
記者の「取り調べの極意は?」の問いに、
「人にはみんな持ち味がある。それを生かして、
全身全霊で相対するそれしかない」と答えた。
ノウハウ(専門的な技術・知識)やマニュアル
(取り扱い説明書・手引き書)を信じない人だった、と
関係者は一様に語っていた。
つまり、これもまた前記@の暗黙知の範疇であろう。
世は益々「効率主義」を掲げ、そして求めている。
それは、学校教育・一般社会(企業など各界)挙って
然りなのである。
*過程における弛まぬ努力の重要性
*結果を急いで求める風潮への戒め
*失敗・無駄の重要性
世は浮かれている。
原点への回帰≠望みたい。
〈用語注〉:
智計:知恵をめぐらしたはかりごと。知謀。