貧
而
樂
貧しくして楽しむ。
貧乏であろうとも、卑屈になることはない。
<管 見>
他者のための人生ではないのだ。
周囲に惑わされることなく、確りとした目的をもって一途に歩むならば、それが己の人生を充ちたものとするのだ、と思う。
己を信じて一生懸命に努めれば、自ずと道が開かれてその先に人生の真の味が生まれ、次第にその味が心の襞に深く沁みてゆくだろう。
すると、やがて努力が心の中で熟成され、楽しさと化して心の底から湧きだしてくるのだ。
敗戦(昭和二十年)前後の頃を想えば、「モノの豊かさ」は別世界である。
然し、「モノの豊かさ」に反比例した「ココロの貧しさ」は、その代償なのだろうか。
だとすれば、人の性はなんとも悲しく、浮世の性は定めなきことの証しなのだろうか。
初期段階では、文字通りの「衣食足りて、礼節を知る」も、やがて経済が安定して成熟期に達すると当たり前の風潮が蔓延し、現状のような「衣食足りて、尚、礼節を知らず」となるのであろう。
蛇足ながらさらに加筆するならば、
名利を得れば得るほど、それに比例して懸念(心配事)が増し、
保有せざる者は、憂い少なくして日々を後生楽に暮らせる、のではないだろうか。